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第69会期国連国際法委員会 前半会期

2017/06/15

第69会期国連国際法委員会の前半会期が5月1日から6月2日の5週間、スイスの国連欧州本部で開催されました。2017年度は34名の委員の5年任期の初年度に当たり、新たな委員構成の下での開催となります。通常、初年次は委員の5年任期を意識した手続的内容の話し合いが多くなる傾向にあるとされて いますが、今会期については継続議題が多く、前半会期に継続議題の実質的な審議が集中的に行われることとなりました。来年度は記念すべき節目の第70会期を迎えるため、来年度の第70会期は多分に儀式的要素も出てくるものと思われます。今会期会議冒頭、全体会合の議長にノルテ委員(ドイツ)、起草委員会の議長にラジュプット委員(インド)が選出されました。

前半会期での審議経過はすでに国際法委員会のホームページの日報に公開されております。日報には全体会合の審議内容その他公開審議の録音データへのリンクもあるため、日本にいながらにして、全体会合の審議経過及び5月4日午後に開催された大気の保護についての非公式会合である科学者との対話のフォローが可能となっております。

前半会期に取り上げられた議題は、①人道に対する犯罪、②大気の保護、③条約の暫定的適用、④政府職員の外国の刑事管轄権からの免除、の4つであり、このうち①~③について特別報告者の条文草案又はガイドライン草案が起草委員会に送付されました。その後、起草委員会での審議結果を踏まえた修正された条文草案等が全体会合へ送付され、それぞれ条文草案等の一部を暫定採択しました。④の免除の議題については、全体会合から起草委員会へ条文草案が送付されることが決定された後、起草委員会が前半会期終了時点で審議継続中です。各議題の各起草委員会の審議には希望する委員が参加し、出席委員の補佐は傍聴が可能となっております。そして、起草委員会の審 議内容は 非公開です。ただし、各起 草委員会の審議終了後に起草委員会議長が全体会合で審議概要の報告を読み上げます。これがについてすでに公開されており、審議概要を一定程度推し量ることが可能となっております。免除の議題については、全体会合での審議の総括が5月30日に特別報告者から読み上げられていて音声記録が公開されています(11:28頃開始)。

①の起草委員会の審議概要報告書にある通り、④の議題だけでなく、①人道に対する犯罪に関しても後半会期に起草委員会を開催して、主に(暫定採択されている条文草案に入っていない)恩赦と免除について審議を継続することとなりました。これにより、前半会期では、①人道に対する犯罪について前半会期では第1~第15条までの条文草案、前文案、附属書案の条文案 全体について全体会合で第1読が行われたものの、後半会期の全体会合で条文草案の修正の余地を残す「暫定採択」となっているようです。人道に対する犯罪の条文草案は留保についても取り扱っていないのですが、条約交渉時に国家が最終規定に留保の規定を含むかどうかを決定すれば良いということになって、当初の特別報告者の提案どおり、留保については条文草案は立場をとらないことになりました。結果として全体会合でA/CN.4/L.862が暫定採択されております。

大気の保護の議題については、起草委員会での活発な審議の結果、ガイドライン草案9、前文3bis、前文4bis、前文6が全体会合で暫定採択されております。ガイドライン草案9は、3段落から成っており、大気の保護の国際法規範と他の国際法規範間 で関係性の生ずる側面を明らかにし、特に規範間の関係性において配慮すべき事柄をガイドライン化した充実した内容となっております。起草委員会で審議されたガイドライン草案、前文草案が全体会合で暫定採択された際に、ガイドライン草案9と適合させるため、前文草案4bisのseaとlevelにハイフンを入れるなどの数点の字句修正を加えることが合意された上で、A.CN.4/L.894の全体会合での暫定採択となりました。

条約の暫定的適用については、昨年会期までの全体会合で留意されたガイドライン草案1~4、6~9に加えて、起草委員会で10から12が暫定採択され、今年の前半会期の全体会合でA/CN.4/L.895のガイドライン草案1-4、6-12が暫定採択されました。

7月3日より再開されます後半会期の審議では、前半会期で扱えなかったユス・コーゲンスの議題について重点的な審議が行われることが想定されます。その他、前半会期の5月9日に国際法委員会の全体会合が、昨年度長期作業計画に含められた「国家責任に関する国家承継」の議題について、正式議題化し、提案者のストゥルマ委員(チェコ)を特別報告者に指名していることから、その議題の審議も想定されるところです。傍聴に当たり、委員の村瀬先生をはじめ多くの方々にお世話になりました。関係のすべての方々に心よりお礼申し上げます、どうもありがとうございました。

写真は国連欧州本部前の様子で、広場に設置された壊れた椅子のオブジェが高く聳え立ち、武力紛争中に地雷や爆弾によって傷ついた被害者の尊厳を象徴しています。

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© Hitomi Takemura